意外におもしろい? ~薬の名前の付け方あれこれ~

こんにちは。薬剤師の岩本まりこです。

私は普段、薬は飲んでないんですが、皆さんは何か薬を飲まれてますか?

薬局に行った時や友達との話の中で、体調や薬に関する話をすることもあると思います。そんな時、薬の名前がわからず、「血圧の薬」や「コレステロールの薬」と言っているのではないでしょうか。

薬の名前はややこしいものが多くて覚えにくいし、普段の話では「○○の薬」で通じるから問題ないですよね。でも、実は薬の名前の付け方の中で、おもしろいものもあるんですよ。

今回は、そんな薬の名前の付け方について書いてみたいと思います。

 

薬の分類

薬は大きく分けると、病院でもらう薬と自分で買う市販薬とに分けられます。

病院でもらう薬には、先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック医薬品)があります。

先発医薬品
薬となる成分が開発され、最初にその成分で作られた医薬品

後発医薬品
先発医薬品に付いている特許が切れてから、先発医薬品と同じ成分を使って作られた医薬品

では、これらの命名法について順番に見ていきましょう。

 

先発医薬品の命名

先発医薬品の名前は、その薬を開発したメーカーが付けています。ほとんどは、薬の成分名や作用等に由来していることが多いようです。

学生時代に先生から聞いた話ですが、便秘薬の「ヨーデルS糖衣錠」は、最初「ヨーデルP」で申請したそうです。

先生曰く、ヨーデル=(便が)よく出る、P=(お腹が)ピーピーということだそうで、それはあまりにもよろしくないからと申請が通らなかったので、ヨーデルSにしたとのこと。

実際の薬の名前の由来は、各メーカーが出しているインタビューフォームという薬の解説書に載っています。

試しにヨーデルS糖衣錠のインタビューフォームで名前の由来を見てみると、

「スイスのヨーデルの爽やかな感じをイメージさせるため。また、S は superior(優れた、上質の)を意味する。」と書いてありました。

「スイスのヨーデル」って、どこから出てきたんでしょうね(笑)

他にも調べてみました。

アレルギー薬のアレロックは、アレルギー(Allergy)症状のブロック(Block)に由来するとのこと。

痛み止めのロキソニンは、成分名のロキソプロフェンナトリウムから命名されています。

睡眠薬のルネスタは、Luna(=月)+Star(=星)からきているとのこと。

インフルエンザ薬のタミフルは、成分名のオセルタミビルの「タミ」と、インフルエンザの「フル」を複合して命名したそうです。

医薬品メーカーはいろいろと考えていますね。

 

後発医薬品(ジェネリック医薬品)の命名

後発医薬品の命名も、以前は先発医薬品と同じようにメーカーが独自に付けていました。

例えば、ロキソニンの後発医薬品は、「ロブ」、「ロキソマリン」、「ロキペイン」等々、メーカーによっていろんな名前が付けられていました。

中には、「ケンタン」というような、ロキソニンの名前からはかけ離れた名前を付けるメーカーもありました。こうなると、薬剤師の私から見ても何の薬か全く分かりません。

このままだと、後発医薬品が増えれば増えるほどいろいろな名前が出できて、一体何の薬かが分かりにくくなってしまいます。このため、平成17年から、後発医薬品は薬の成分の名前を利用して命名することになりました。

形式としては、
一般名(成分名)+剤型+含量+「会社名」です。
(※剤型とは、錠剤やカプセルといった薬の形のことです。)

ロキソニン錠の後発医薬品の場合、
ロキソプロフェンナトリウム錠60㎎「サワイ」とか、
ロキソプロフェンナトリウム錠60㎎「日医工」となります。

かえって分かりにくくなったと思われるかもしれませんが、薬剤師にとっては一目で何の薬の後発医薬品か分かるようになりました。

 

市販薬の命名

市販の薬は、先発医薬品と同じように各メーカーが独自に付けています。

ですから、同じ成分を使った薬でも、メーカーによっていろいろな名前がありますよね。

その中でも、小林製薬は名前の付け方がユニークでおもしろいなぁと、いつも感心しています。

アンメルツやビフナイトなどは昔からある有名な薬ですが、新しく発売された薬でも何の薬か分かるような名前になってます。

ケシミンやサカムケアなどは、名前を聞くだけで、シミを消すとか、さかむけをケア(治療)してくれるって連想できますよね。

ただ、注意してほしいのは、何に効く薬かは分かるけれど、どんな成分が入っているかが分かりにくい点です。

例えば、おなかの脂肪を落とすというナイシトールや、蓄膿症を改善するというチクナインなどは、名前からは漢方薬のように感じませんが、実は漢方薬なんです。

そうとは知らず、病院でも漢方薬をもらって飲んでいると、生薬が重複してしまうことも考えられます。

漢方にも副作用はあるので、たくさん飲むと副作用が出る可能性があります。

もちろん、他の会社の市販薬でもサプリメントでも、名前から成分が分かりにくいものがあります。

また、最近では、
同じ名前でも、後ろに付いてる語句やアルファベットの違いで入っている成分が変わってくるような市販薬があります。

例えば、ロキソニンSシリーズの場合、
ロキソニンS、ロキソニンSプラス、ロキソニンSプレミアム全てにロキソニンの成分が入っていて、プラスとプレミアムには他の成分が追加されています。

コーラックシリーズの場合、
コーラックとコーラックMgとでは全然違う成分が入っています。
そうとは知らず、コーラックMgを飲んでるのに、病院や薬局で「コーラックを飲んでます」と言うと、処方された薬との飲み合わせが変わってくる場合があります。

病院にかかる時は、自分が飲んでいる商品の内容を知っておくか、医師や薬剤師に飲んでいる商品の名前をきちんと伝えるようにしてください。

 

まとめ

医薬品やサプリメントの名前は、各メーカーが考えに考えた末に付けているのだと思います。病院でもらう薬の名前はややこしくて取っつきにくいですが、その由来を調べてみるのもおもしろいですよ。

また、市販薬やサプリメントを飲んでいる場合は、医師や薬剤師に商品の名前をきちんと伝えるようにしてくださいね。