葛根湯は効果がない!? ~風邪は薬を飲まなくても治るのか?~

薬剤師の岩本まりこです。

先日、職場で風邪の話になり、あるスタッフから「風邪の時に葛根湯を飲んでも効かないって前にテレビでやってたよ。」と言われてビックリしました。私自身も葛根湯が大好きだし、薬嫌いの主人を葛根湯信者にした(笑)身としては聞き捨てならず、いろいろ調べてみました。
また、YOKUSHIRU.TVで、「風邪薬は飲まなくても治るの?」という質問もいただきました。
最近は、夏でも風邪をひく人も多いようなので、今回は風邪について書いていこうと思います。

風邪に葛根湯は効かない??

まずは、テレビで葛根湯がどのように取り上げられていたのかを調べてみました。すると、どうやら京大の先生が書いた論文を基に、「葛根湯を飲んでも2割程度の人が風邪が重症化したから葛根湯は効かない」というもののようでした。

私もこの論文を読んでみたのですが、葛根湯が風邪の重症化を防げなかったという結果になった原因が論文の最後の部分に書かれていました。

①葛根湯の量が少なかった。

②プラセボ(偽薬)との比較ではなく、市販薬(パブロン)との比較であった。

③漢方診療における「証」をほとんど考慮していなかった。

 

つまり、体質的に葛根湯が合う人に、治療に使う適正な量を飲んでもらえば葛根湯は効いていたかもしれないということです。

また、プラセボではなく市販の風邪薬と比較したので、どちらもがある程度は風邪の重症化を防いでいる可能性があり、葛根湯本来の効果が余計に分かりにくくなっています。新薬の試験では普通はプラセボと比較します。今回もプラセボと比較していれば、葛根湯の効果は明らかだったと思います。

後日、この番組に対して日本漢方生薬製剤協会から申し入れがあり、番組ホームページにお詫び文が掲載されたそうです。

それにしても、筆者がこのように結論づけている論文を持ち出して、「葛根湯は効果がない」とするのは少し乱暴だなと感じました。以前のブログにもメディアのことを書きましたが、テレビは影響力が大きいだけに、しっかりと証明されたことだけを取り上げてほしいなと思います。

 

風邪に対する薬のお話

では、ここからは風邪に対する薬についてお話ししていきますね。

風邪をひいたら病院で薬をもらわれる方もいると思いますが、実は風邪に対する特効薬はないんです。

そして、さらに意外と思われるかもしれませんが、風邪に抗生物質は効果がないんです。

なぜなら、風邪の約9割はウイルスが原因なんですが、抗生物質はばい菌(細菌)に対する薬であって、ウイルスには効果がないからです。(ばい菌が原因の風邪や、ウイルスによる風邪で体力が落ちているところに二次的にばい菌が感染した場合は、もちろん抗生物質で効果はありますよ。)

抗生物質が効かないなら、ウイルスに対する薬を出したらいいと思われるかもしれませんが、風邪のウイルスは数百種類あると言われており、今ひいている風邪の原因がどのウイルスかを特定するのが難しいので、ウイルスに対する薬も出せません。

では、病院でもらう風邪薬や市販の風邪薬は一体何なのかと言うと、今ある症状(咳や鼻水、発熱など)を改善して、体を楽にするのが目的です。

昔は風邪に抗生物質が出されることが多かったようですが、近頃では風邪に抗生物質を処方する先生は減ってきています。実際、私が勤務する薬局で受ける小児科の処方箋では、風邪に対して抗生物質はほとんど処方されていません。

余談ですが、抗生物質が処方された時は、症状が落ち着いても最後まで飲み切ってくださいね! 途中で飲むのを止めてしまうことを繰り返すと、抗生物質が効きにくい菌が発生しやすくなり、次に抗生物質を飲んだ時に効きにくくなってしまいますよ。

 

風邪をひいたらどうしたらいいの?

では、風邪をひいたらどうしたらいいのでしょうか?
病院に行って薬をもらうのもひとつの方法ですし、薬に頼らず家でゆっくり休むのもいいと思います。

ヒトには免疫力があります。ですから、必ずしも薬を飲まなくても栄養休養を取れば風邪は治っていくものなのです。逆に、いくら薬を飲んでいても、体を休めることなく無理をしていれば治りは遅くなりますよね。

また、普段からの予防も重要です。人込みではマスクをする、帰ってきたら手洗いやうがいをする、栄養バランスのよい食事を食べる、十分な睡眠を取るなど、生活習慣を改善するだけでも風邪をひきにくくなります。免疫力を上げるために、ビタミンやミネラルなどのサプリメントも上手に活用してもらったらいいと思います。

生活習慣を変えるのはなかなか難しいですが、自分の体のために少しずつでも意識してみてください。きっと変わっていくと思いますよ!