こんにちは。薬剤師の岩本まりこです。
うちの薬局では、先月くらいから、小学生以下の子どもさんにアレルギーの薬が出ることが増えてきました。
よくあるのは、「別に変わったものを食べたわけでもないのに湿疹が出たんです。」というケース。
コロナの影響で学校にも行けず、ずっと家の中で過ごしているので、ストレスが溜まっているのでしょうか。
そうかと思うと、「学校(保育園)が休みのうちに、アレルギーのある卵に少しずつ挑戦しています。症状が出た時のために薬をもらいに来ました。」というケースもありました。
ここで、皆さんに質問です。
アレルギーの原因となる食物は避けるものと思っていませんか?
実はそれ、古い考え方なんです。
今回は、食物アレルギー治療の変化について書いていきたいと思います。
食物アレルギーの治療方法の変化
食物アレルギーと言えば、卵や小麦粉等を食べたり、牛乳を飲んだりした時に蕁麻疹が出るイメージかと思います。
これは、特定の食物に含まれるアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に対して、体の免疫が過剰に反応してしまうことが原因です。
蕁麻疹以外にも、喉が痒くなる・イガイガしてくる、咳が出る、むくんでくる、呼吸が苦しくなってくる等の症状が出る場合もあります。
血圧が低下したり意識障害が出たりするアナフィラキシーショックという状態になった場合は、短時間で症状が進行して命の危険を伴う可能性があるので、救急車を呼んですぐに処置してもらう必要があります。
(ちなみに、アナフィラキシーショックの時に自分で注射できるお薬もあるので、食物アレルギーと診断された方は処方してもらって常に持ち歩くようにしておけば安心かと思います。)
そのように怖い症状に陥ることもあるので、昔は原因となる食物を完全に除去することが普通でした。私も10年ほど前までは、アレルゲンは避けないといけないものだと思っていました。
しかし、最近の食物アレルギーの治療では、症状が出ない量のアレルゲンを食べさせていく方法が取られています。
現在、赤ちゃんの食物アレルギーは、成長とともに治っていくことが多いことが分かっています。つまり、だんだんと食べても大丈夫なようになっていくんです。
それを知らずにいつまでも原因の食物を除去する方法を取ると、一生除去し続けなければいけなくなります。
特に、卵や牛乳、小麦粉等はいろいろな料理に使いますし、加工食品にも含まれる可能性が高い食品です。それをずっと除去し続けることは、ご家族の方にとっても本人にとっても非常に大変です。
ですから、正しい知識を得て、病院で血液検査や負荷試験(どのくらい食べても大丈夫かを確認する試験)を定期的に行い、少しずつ食べられる量を増やしていくことが重要です。
食物アレルギーとアトピーの関係
通常、アレルギー症状というのは、アレルギーの原因物質が初めて体に入ってきた時には起こらず、2回目に入ってきた時に症状が起こります。
でも、赤ちゃんの場合は、離乳食として初めて特定の食物を食べた時に症状が出ます。
ということは、赤ちゃんが離乳食を始めるより前に、原因物質が体の中に入ってきていると考えられます。
では、どこから入ってきているのかというと、皮膚から入ってきているということが分かってきています。
離乳食を始めるまでに、アトピー性皮膚炎を起こしていたり、保湿が不十分で皮膚がガサガサだったりしていると、そこからアレルゲンが少しずつ入ってきてしまうんです。
逆に、皮膚から入ってくるのを防ぎ、口からアレルゲンが入ると、アレルギー症状は出ないように働くことも分かっています。
ですから、小さいうちから、皮膚の状態をできるだけ良い状態に保つことで食物アレルギーを抑えることができるのです。
これは、食物アレルギーだけでなく、花粉症にも当てはまると言われています。
何にしても、保湿をしっかりとして、皮膚をきれいな状態にしておくように心がけましょう。
まとめ
どの病気に関しても言えることですが、医療は日々進歩し、治療方法も変わってきています。
以前は原因が分からなかった病気が、原因が分かるようになって治療できるようになったり、原因が分かっていても治せなかった病気が、新しい薬が開発されて治せるようになっていたりします。
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎も、様々な治療方法や新しい薬が出てきています。
何か気になることがある時は、自己判断で対応せず、ぜひ病院や薬局で相談してみてくださいね。

薬剤師
岩本真理子 Mariko Iwamoto
経歴
- 神戸薬科大学を卒業後、地元の調剤薬局に就職
- 西洋薬と漢方薬を取り扱う薬局で勤務した後、精神科、小児科の門前薬局を経験
- 育休中取得後、調剤薬局に復帰。仕事と育児に奮闘中。
資格
- 薬剤師
- 漢方薬・生薬認定薬剤師