たかが、「むち打ち」、 されど、「むち打ち」。

JCR登録カイロプラクターの彦坂です。

 

今回は「むち打ち症」についてお話しします。

 

「むち打ち症」とは、交通事故での追突などによって、頭部が鞭(ムチ)の動きのように前後に過度の屈伸をして、首の組織に損傷を生じたために起こる症状のことをいいます。

損傷そのものではなく、その損傷を負うことになった原因を示す用語であって、傷病名ではないので、診断書には「頸椎捻挫」、「頸部捻挫」、「頸部損傷」、「頸部挫傷」、「外傷性頸部症候群」などと記載されることが通常です。

 

実際にむち打ち症の患者さんを施術してきた私の経験では、

 

・頭や首、肩、背中の痛みが断続的に続いている。

 

・吐き気や腕のしびれがある。ひどい時には起き上がることもできない。

 

・眠れない、うつ症状がある。

 

・身近な人に辛さを理解されず、精神的に苦しんでいる方が多い。

 

・レントゲンやMRIの画像所見では特に問題がないため、症状があるにも関わらず、

仕方なく交通事故の相手方と示談をされた。

 

など、なんらかの悩みや問題を抱えている方が多いです。

むち打ち症を経験された方は、共感できるところがあるのではないでしょうか。

 

 

この「むち打ち症」という状態から、様々な辛い症状が発生するのですが、さらに深刻な病状へと移行する場合があります。

 

「むち打ち損傷が軽微な外傷であると考えるのは誤りである。なぜならば、俗にいうむち打ち損傷のなかに、多くの脳損傷が含まれているからである。」

 

これは、東京・ひらの亀戸ひまわり診療所の整形外科医、石橋徹先生の言葉です。

 

「脳損傷? むち打ちで??」

 

私自身この考えに驚き、最初は信じられませんでした。

 

しかし、WHO(世界保健機関)では、2020年には世界第3位の疾患になると指摘しています。

 

その疾患名は、「軽度外傷性脳損傷」です。

 

軽度といっても軽い病状という意味ではありません。受傷時の意識障害が軽度である(30分以内でおさまる)ということです。

 

その原因は、交通事故で追突された際のむち打ちはもちろんのこと、転倒・転落事故、スポーツによる外傷(例えば、サッカーのヘディングや柔道の投げ技で畳に頭を強く打ちつけられるなど)、乳児を激しく揺さぶってあやす「揺さぶり症候群」、家庭内暴力(DV)など、多岐にわたります。

 

最近、アメリカでは10歳以下の子供のサッカーでのヘディングが禁止になりましたが、これは、子どもの頃からの頭部への繰り返しの衝撃が良くないとの判断からです。

 

「軽度外傷性脳損傷」は、日常生活の中で誰でも起こりうる身近な病気なのです。

 

 

交通事故で追突をされ、頭部に衝撃が加わり脳震とうなど数分間の意識障害があっても、救急車が着いた時に意識が戻っていれば「意識障害なし」と判断されます。病院での画像診断で異常がなければ、医師に「頸椎捻挫」いわゆる「むち打ち」と判断されるのです。

 

「頸椎捻挫」と診断され、その後日常生活を送るなかで

 

・意識を失う、けいれん、

 

・視力の低下、握力の低下、味覚障害、嗅覚障害、耳鳴りがする、聞こえが悪くなるなどの脳神経の異常、

 

・記憶力の低下、仕事のミスが増える、感情のコントロールができなくなるなどの高次機能障害などを発症するケースもあります。

 

このような場合は、「軽度外傷性脳損傷」を疑い、専門家の診断を受けることが必要です。

 

しかし日本では医師も含めてこの疾患への認知度が低いため、正しく診断をされず、治療を受ける機会を失っている方達が多数いるといわれています。

 

しかも交通事故で傷害を負った場合、

 

医師、加害者、保険会社がその被害を証明してくれるのではありません。

 

交通事故と傷害の因果関係の立証責任はケガを負わされた被害者にあるのです。

 

 

「交通事故被害者は二度泣かされる」

 

このような言葉があることをご存知ですか。

 

・事故で身体にケガを負うことが一つ目。

 

・被害を受けたにも関わらず、事故との因果関係が認められないため、適切な補償を受けられないことが二つ目です。

 

もしも不運にも事故に遭ってしまったら、まず意識障害があったかどうかの確認をすること。

それを救急隊員、医師にしっかりと伝えて、記録簿やカルテに残してもらいましょう。

 

また、病院ではレントゲン撮影だけではなく、CTやMRI検査をはじめ、しっかりと精密検査を受けましょう。

 

そして、適切な補償について相談ができるように、自動車保険に「弁護士特約」を付けることが大切です。

自動車事故発生時の状況を映像記録してくれる「ドライブレコーダー」を車載しておくこともお勧めします。

 

 

繰り返しになりますが、日本では医師の「軽度外傷性脳損傷」への認知度が低いこと。立証責任は被害者が負わなくてはならないこと。因果関係を証明できないために適切な補償を受けられていない人がいることを、是非覚えておいてください。

 

もしもの時に備えて、一度ご家族で話し合ってみてはいかかでしょうか。

 

 

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