こんにちは。薬剤師の岩本まりこです。
前回のブログで、食物アレルギーとアトピーの関係について書きました。
赤ちゃんの皮膚からアレルゲンが入ってきて食物アレルギーになるため、皮膚の状態を良い状態に保つことが大切という内容でした。
では、皮膚の状態を良い状態に保つにはどうすればいいのでしょうか。
また、アトピー性皮膚炎によく処方されるステロイドは怖いと思われがちですが、実際のところはどうなのでしょうか。
今回はそれらのことについて書いていきたいと思います。
皮膚を良い状態に保つには
赤ちゃんの肌はすべすべで柔らかく、一見、保湿の必要はないように思えますよね。
でも、赤ちゃんの皮膚の厚さは大人の半分ほどしかありません。
また、生後2か月頃まではお母さんからのホルモンの影響で皮脂がたくさん分泌されていますが、それを過ぎると急激に少なくなっていきます。
皮脂が少なくなると、肌のバリア機能が十分でなくなるので、外からの刺激を受けやすい状態になってしまいます。
そこで、毎日のお風呂で肌を清潔にし、保湿をして赤ちゃんの肌を守っていく必要があるのです。
その際に注意してもらいたいことが3つあります。
①お湯の温度に注意
熱いお湯だと肌への刺激になるので、シャワーやお風呂のお湯の温度はぬるめにしてください。
夏で38℃、冬で40℃程度で良いと言われています。
また、長時間の入浴も皮脂を取りすぎてしまうことになるので、体を洗う時間も含めて10-15分程度にすると良いでしょう。
②洗う時や拭く時は優しく
体を洗う時は、石鹸やボディーソープをよく泡立てて、手のひらかガーゼで優しく洗ってあげましょう。
硬いナイロンタオルは肌を痛めてしまいます。
2歳半になるうちの子も、いつも手のひらで洗っています。
そして、お風呂から上がる時は、バスタオルでポンポンと押さえるように優しく拭いてあげましょう。
③入浴後の保湿はしっかりと
体を洗った後は乾燥しがちなので、入浴後はできるだけ早めに保湿クリームを塗ってあげてください。
最近では、入浴後すぐに保湿するのと、しばらく時間が経ってから保湿するのとではあまり違いがないという研究結果も出てきているようですが、肌をきれいにした状態で塗る方が望ましいので、やはり入浴後は早めに塗ってくださいね。
ステロイドの使用について
普段から保湿をしっかりしていても、どうしても湿疹が出たりアトピー性皮膚炎になってしまったりすることはあります。
その場合、小児科や皮膚科を受診するとステロイドが処方されることが多いかと思います。
私の職場の隣の小児科でもステロイドの軟膏が処方されることが良くあります。
ステロイドに対して、いまだに怖い薬だと思われている方がいるようですが、それは全くの誤解です。
ステロイドは正しく使えば怖いどころか、とても良い薬です。
大量のステロイドを長期間飲んだり点滴したりすると全身性の副作用が出る可能性はありますが、症状に合った強さの塗り薬を塗るのであれば副作用はほとんど気にすることはありません。
私は15年以上、皮膚科や小児科の処方箋によりステロイドの塗り薬を患者さんにお渡ししていますが、今までに副作用の訴えは全くありませんでした。
それどころか、ステロイドを塗って症状が良くなったと言われるケースがほとんどです。
また、きちんと病院で診てもらうことで、今の症状や塗る場所に合った強さの薬を選んでもらえます。
ステロイドには強さのランクが5段階あります。
それほど症状がひどくない場合は、下から1-2番目のステロイドが処方されます。
やや症状がひどい場合は3番目をというように、先生はしっかり症状の度合いを見て強さを決められています。
むやみに強い薬は使いません。
また、症状の度合いが同じくらいでも、塗る場所によって強さを変えています。
これは、場所によってステロイドの吸収率が違ってくるからなのです。
例えば、体より顔の方がよく吸収するので、同じ症状が出ていても顔には少し弱めのステロイドを処方するといった具合です。
そして、症状が良くなってきてステロイドを止める時ですが、一気に止めるのではなく徐々に止めていくのも大事なポイントです。
強めのステロイドを使っていた場合は弱いものに変えていく、1日2-3回塗っていたのなら1日1回にする等、少しずつステロイドの強さと塗る回数を調節していきます。それでも調子がいい状態が続けば、さらに調節していくという感じです。
このように、しっかり管理しながら使ってもらう分には何も怖がる必要はありません。
ですから、病院に行くことやステロイドを使うことを躊躇せず、肌トラブルがひどくなる前に受診して、皮膚を良い状態に保つようにしてくださいね。
最後に
いつも書いていることですが、体調に何か気になることがあった時はそのままにせず、ぜひ病院で診てもらってください。
昔のイメージで、この病気は治らないとか、この薬は怖いとかという考えがあるかもしれませんが、医療は日々進化しています。薬も新しいものがどんどんできています。また、完全に治らなくても、良い状態を保つ方法が確立されているかもしれません。
逆に、病院に行って検査をして何も異常が無ければ、それはそれで安心材料になると思います。不調を感じつつも、そのままにしておくのではなく、しっかり検査してもらってくださいね。
それと、私事ですが、個人的な都合によりYOKUSHIRU.カラダノコトのブログの担当を今回で一旦終了し、しばらくお休みさせていただくことになりました。
拙い文章で、何をどのくらい皆様にお伝えすることができたかは分かりませんが、私個人としてはとてもいい経験をさせていただくことができました。
最後まで読んでいただいた皆様には感謝しかありません。
今まで本当にありがとうございました。
他の先生方のブログはまだまだ続くので、今後もどうぞ楽しみになさってくださいね。
薬剤師
岩本真理子 Mariko Iwamoto
経歴
- 神戸薬科大学を卒業後、地元の調剤薬局に就職
- 西洋薬と漢方薬を取り扱う薬局で勤務した後、精神科、小児科の門前薬局を経験
- 育休中取得後、調剤薬局に復帰。仕事と育児に奮闘中。
資格
- 薬剤師
- 漢方薬・生薬認定薬剤師